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調査日:2006年3月26日〜2006年3月31日

1.一般被災者の状況

◇ 生活の状況
  現在住宅再建が進行しており、被災住民の約70〜80%が復興住宅へ移り新たな生活を開始している。住宅の再建に際しては、政府から資金の支援があり、土地を所有するものはその土地に新たな住宅を建てている。
また、土地を所有していなかった者も、政府がNGO等と共同して建設した復興住宅に移住している。急遽建設された復興住宅村では土地の基盤整備が不十分だったようで、雨による土地の浸食が起こりその浸食部分に生活排水が貯まっていた。熱帯地域ということもあり、環境汚染による感染症の発生などが懸念される。

◇コミュニティ形成
 住宅は再建されているが、Takua-pa市などでは、一カ所に300世帯分ほどの復興住宅が集中して建設されており、もとは離れた地区に暮らしていた被災住民が、元の土地を離れて復興住宅へ地域ごとに移住してきているという現象が見られている。元の集落(コミュニティ)がその単位を崩さずに移住している点では、コミュニティの継続性が保たれているようである。しかし、コミュニティ同士の新たな関係性の構築が必要となっている。
また、復興住宅は、援助したNGOによりその形態・広さなどが異なることや、新規に流入した被災住民と復興住宅周辺の住民との関係性も、被災住民の住宅事情が周辺住民に比べ格段によいこと等から、対立が生まれつつあることが懸念されている。

◇健康状態
 今回の調査から得られた情報の範囲では、顕著な問題は発生していない。食生活については、被災前の状態に近いものに戻っており、栄養失調や過剰栄養の状態は把握されなかった。
被災者の心の問題については、現地医療関係者も関心が高く、心のケアの研修を受けて住民に対応しているということであった。被災者からは直後には津波の恐怖で眠れないということもあったが、現在は以前に戻っているという言葉が聞かれた。

2.現地の医療機能の状態

◇既存の医療機関等の機能回復
<病院>
 今回訪問したK病院、T病院は共に、津波発生時に災害対策が整っておらず、マネジメントに問題があり相当な混乱があった。両病院とも津波災害時の対応が不十分であったことを反省し、この1年間で病院防災計画および、地域医療保健機関との災害時連携に関する対策を策定した。


<ヘルスポスト等> 
仮設住宅に設置されていたヘルスポスト(T病院からスタッフが派遣)は現在も継続されているが、その役割は変化している。1年前は簡単な薬品の配布や小さな傷の手当など医療活動的性格の強い活動を主体としていたが、現在は“leaning center”と名称を変え、健康教育・指導を主に行っている。
また、スタッフは常駐ではなく、地域保健の活動拠点として不定期に活用されている。


3.ケア提供者の状況

◇勤務状況
 被災直後には確かに過重勤務等の問題があったようであるが、その期間は短く身体的な健康問題は特に認められていない。

◇ケア提供者の個人的被害と復旧状態
 保健医療に関しては、ピピ島では病院も保健センターも破壊されており、これらの施設で働いていた医療スタッフは津波により死亡もしくは津波後に離島している。しかし他の地域では、大部分の看護職自身は、被災を受けていない。

◇精神的側面
 今回の調査において、災害時に対応した看護職の間における健康問題等は明確には認められなかった。その理由としては、大部分の看護職が自身は被災を受けていないことや病院が被災していないことが挙げられる。また、死や遺体に対する認知の違い(仏教と他宗教とを比較して)等も考えられる。
ただし、精神的な問題に関しては、自己の体験や問題を語ることができるためには一定の時間が必要であり、1年後の今回の調査時点ではまだ語ることができるに十分な時間が経過していないことも考えられる。さらには、語ることができる安心した場があることも重要であるが、看護師の雇用形態から考えて、上司などの前で自己のつらい体験等を吐露することがはばかられているということも考えられる。
また、健康問題のみならずインドネシアで見られたような災害後に医療先進国からもたらされた支援により看護職の自尊感情やモチベーションが下がるという現象も認められていない。この理由については、タイの看護職は高学歴で社会的地位も高く元来自尊感情が高いことが影響していることも考えられる。

4.その他

◇現地看護協会の活動
 タイ看護協会では会長を中心として、災害後の中長期的な住民の健康管理に対する活動を始めようとしている。タイ看護協会が建設を進めているT Villageでは個人住宅だけでなくパブリックスペースと看護職用のオフィスをあわせて建設中である。このオフィスを拠点として、この地域を管轄するR病院(県病院)およびK病院(郡病院)のコミュニティ担当看護師が地域住民の健康調査や健康管理のための活動などを展開していくことを計画している。

  また、タイ国内のモデル地区として、他の地域の看護師や看護学生の実習場所とすることも考えられている。具体的な活動計画はこれからであるが、津波災害を契機に看護職が地域保健に関心を向けるきっかけとなることが期待されている。

 また、大きな被害を受けたピピ島は、政府と住民の間に復興についての思惑の対立があり、なかなか復興計画がまとまらず、復興が進んでいない。今後タイ看護協会が調査ならびにフォローを行っていくことを決定しており、継続してタイ看護協会と情報を交換していくことで、さらに災害後中長期の健康問題の把握およびアセスメントの視点を構築していくことにつながると思われる。

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